(画像:東京堂書店入口)
登壇者は、直木賞受賞作家の今村翔吾とHIP-HOPアーティスト#KTCHAN。
(左:今村翔吾氏、右:#KTCHAN氏)
「行きたかったけど行けなかった…」そんな方のためにも、当日のトークショーの内容を一部紹介したいと思います。
まずはお二人のプロフィールからご紹介!
今村翔吾(いまむら しょうご)
・歴史小説・時代小説家(新時代小説家)
受賞歴:第7回歴史時代作家クラブ・文庫書き下ろし新人賞、第10回角川春樹小説賞、第41回吉川英治文学新人賞、第8回野村胡堂文学賞、第11回山田風太郎賞、第6回吉川英治文庫賞、第166回直木三十五賞
・書店経営者
シェア型書店『ほんまる』(神保町)
佐賀之書店(佐賀駅構内)
きのしたブックセンター(大阪・箕面市)
#KTCHAN
・ラッパー、HIP-HOPアーティスト
HIPHOP界のシンデレラガール
2022年高校生RAP選手権でフリースタイルデビュー。
2年連続YouTube再生回数1位(フリースタイル)を獲得。
フリースタイルデビュー8ヶ月という史上最速で両国国技館の舞台に出場。 同月、アーティストとしてストリーミングデビュー。
2025年1月13日、メジャーデビューシングル「距離ガール」をリリース。
「本屋のススメ」と題して開催された今回のイベントは、お二人の書店の巡り方、本や出版業界に対する思い、本と音楽の意外な繋がり、お二人の人生経験など、1時間半たっぷりお話していただきました。
年齢や業種の違いがありつつも、共通点を活かした対話が展開され、文学と音楽が融合するような会話や構想が膨らんでいき、会場は終始なごやかなムードに包まれていました。
ここからトークショーの一部を紹介していきたいと思います。
●直木賞作家×HIPHOPアーティストの異色の対談、意外なところに共通点を発見
異なる業種であるが、言葉を操ることを生業とする点は同じ、そして読書と書店が好きなお二人、序盤から意外な共通点が見つかります。
今村先生
「元々僕エイベックスとかで曲書いていたんですよ。しかもどっちかっていうとその時で一番僕の多かった仕事がリリックとかトラックやったんですよ。だから最後ラップ絡みで終わってるんですよ。人手がいなくなって、歌う羽目になって、ライブに人が来るようになって、一時期普通にレコチョクで僕の歌がながれてたんよ。僕そもそもヒップホップが好きなんよ、フリースタイルとかも好きで、元々普通に趣味で見ていて、で#KTCHANの存在を知ったんよ。」
#KTCHAN
「へ~!そうなんですね!リリックを書く時と本を書く時って感覚違いますか?」
今村先生
「むしろリリックを書く人は本を書くのに向いていると思う、殺し文句とかっていう“殺し”に行く言葉を知っているから」
#KTCHAN
「パンチラインですね!」
この会話で両者の距離がぐっと縮まりました。
●表紙で売れ行きが分かってしまう?
司会:お二人いつもは書籍や資料はどういったところで手にいれていますか?
今村先生
「やはり書店ですね。正直ネットで買ってしまうときもある。普段買わない本をパッと買うところが町の本屋の利点かなと思っている」
#KTCHAN
「書店でしか本を買わない、本の中身、質感、本の性格みたいなものが生で見たり触ったりして、自分に合うかみたいなものを感じるんですよ」
今村先生
「表紙でだいぶ売れ行きが変わるから、編集者はそこに力を入れている。」
「表紙を見たら、金をかけているから、今年の直木賞をねらっとんな。表紙に金箔を入れているから初版何部以上あるなとか、帯が金やったからここでプラス何円かかっているから初版何部以上あるなとか、見返しが和紙使っているから何万部以上あるなとか、これで大体初版何部かが分かる。これはどっちかというと、賞レースよりも多くの人に、手に取ってほしいから、 ソフトカバーにして価格を落としているなとか」
「そういうのを見てしまうようになりましたね、作家であり本屋なので」
作家目線だけではなく、本屋の経営者として本を見るようになったと明かしました。
●小3で自己啓発本にはまった#KTCHAN
今年20歳となった#KTCHAN、小学校3年の頃に自己啓発本にはまり、「自分の生活水準を上げよう」という子供の無邪気発想に、
今村先生
「自己啓発本はリポビタンDって言ってて、しんどくなったときに読むんよ、すると何かやれる気がするんよ、そういう効果が短期的にはある。一方で“漢方”みたいな本もあり、飲んでいる(読んだ)当時は刺さってないのに、5年後とかにふっと効いてくるみたいな本もあるから、ぼくは“リポビタンD”と“漢方”と“西洋医学”色々まぜながら読むと。本は豊かだなって。」
笑って本を薬に例えていたのが印象的でした。
●#KTCHAN------お客さんの人生が変わる書店を作りたい。
司会:店長を任されたらどういった本屋にしたいでしょう?
今村先生は既に書店を経営されているので、この質問は自然と#KTCHANが答えることとなった。
#KTCHAN
「その来てくれたお客さんの人生変わる1冊みたいな本を並べていくみたいな、その書店入ったら人生変わるよってささやかれる本屋さん作りたい」
「本屋に行くときは刺激がたりないな、アイデアや刺激を求めていっている自分がいて、よりどころになっている部分もあるから、そういう本屋を作りたい」と、思いを明かしました。
●作家だけではなく、「書店経営者」としての一面、そのほかにもまだ知られていなかった今村先生の豊富な人生経験
今村先生はシェア型書店「ほんまる」をオープンしたきっかけや、有名デザイナー佐藤可士和氏にデザインをしてもらった経緯について語りました。現在の書店の存続に危機感を覚えたと同時に、より多くの若い方を呼び込み、違う業界の人の力を借りながら、出版業界全体を盛り上げていくべきだと意気込みを語られる場面もありました。
また最近は書店用のPOPを作る人と書店をマッチングするシステムの開発など、新たな取り組みをされていました。先生の行動力に会場が圧倒されます。
さらに、20代の頃「ロサンゼルスのワッツ地区の高校で臨時講師を務めていた」とこのイベント初解禁の貴重な経験談についても話されていました。
●トークショーの後半は、来場客の質疑応答の時間を設けました。
質問①「今村先生は音楽を聴きながら本を書いたりしていますか?」
今村先生
「僕はめっちゃ音楽聞く作家なんですよ」
「キャラクターごとに合ってるテーマソングとかを決めてやったり、小節ごとのテーマソングとかを決めることによって、3つぐらい並行して書いたりとかもします」
「本と音楽の相性はいいと思う、それぞれのテーマを決めてくれたらすげえ楽しいと思うよと思ってる」
自分が本を出した際は、#KTCHANが作曲し、#KTCHANが本を出した際は、帯を書くと、
さらなるコラボの実現もにおわせていました。
質問②「二人がフィーチャリングするとしたらどんな曲になるか」
今村先生
「やっぱりちょっと和物っぽいものがいいんじゃない?」
#KTCHAN
「その和と最近の流行りのものとかを融合させるみたいな、例えば昭和のトラックにヒップホップの今流行っているジャージークラブの感じを入れ込んで刻んでいく」
今村先生
「吉原をテーマにしたやつとか、吉原を強くいきた女性のリリックみたいなのとかは面白いかもしれないね。華やかな世界、光る君への世界とか、十二単で出てくるような和歌、和歌の一部をちょっと変えたようなやつとかいいかもしれないね」
どんどん想像を膨らませた、曲をだした際は一位をとるぞ!来場者への“強制”ダウンロード発言に、会場はどっと笑いがあがりました。
いつか実現できることを、楽しみにしています。
●皆さんへのおすすめの一冊
今村翔吾・・・『二十一世紀に生きる君たちへ』著者:司馬遼太郎
#KTCHAN・・・『20代で得た知見』著者:F
トークショーの最後は、お二人から来場客へのメッセージで締めくくりました。
トーク中は拍手が鳴り響き、
終始、笑いあり、学びのあるイベントとなりました。
ここでは紹介しきれない素晴らしい対談内容は他にもたくさんあります。
参加されたみなさんも、きっとそれぞれに感じるものがあったのではないでしょうか。
ぜひブックイベントナビ公式Xに感想をお寄せいただけると嬉しいです。
いつかまた、こういった素敵な機会が作れたらいいなと思います。