紀伊國屋書店の高井昌史会長と作家の今村翔吾氏が7月31日、東京・新宿区の紀伊國屋ホールで、対談イベントを行った。高井会長が『奇跡のプロジェクト 図書館が街を変えた!』(東洋経済新報社)を、今村氏が『書店を守れ!』(祥伝社新書)を上梓したことを記念して行われ、紙の本や書店、図書館の可能性を語った。
『奇跡のプロジェクト~』では、紀伊國屋書店が指定管理者を担う荒尾市立図書館(熊本)と紀伊國屋書店あらおシティモール店(同)を軸に、「本の力」で街を変える挑戦を詳説した。高井会長は「図書館と本屋は共存できる」と強調、隣接することで「本好きな人が集まる」と話す。そのうえで図書館は住民に迎合しすぎてはならず、新刊やベストセラーの取扱いは〝図書館員の良識〟にかかっていると説く。
今村氏は2023年から24年にかけ「書店・図書館等関係者における対話の場」に参加し、複本などを巡る両者の激しい対立を目の当たりにした。だからこそ、自ら図書館に出向き「何か一緒にやりたい」と伝えることを重視して、図書館員が参加する文学賞「本の甲子園」を立ち上げたという。
当日は紀伊國屋書店の海外戦略についても、議論がなされた。高井会長は各国の日本発作品の人気を伝え、「どんどん英語版をつくり、世界で読まれるかたちにしていけば、日本の出版は必ず復活する」と呼びかける。また、海外には再販売制度がなく、店員は目利きを鍛えて、何が売れるかと常に考え、出版社と直接交渉にあたっており「そこで人が育っていく」と語る。
紀伊國屋書店は1969年に海外第1号店の米国サンフランシスコ店を出店。日系人向けの書店として開業したが、「現地の書店として勝負しなければならない」と方向転換し、洋書を広く扱うようになった。以降、海外店舗事業では赤字が続くも、投資と出店を止めず、同社を支える柱に成長した。
紀伊國屋書店は、アマゾンが上陸した2000年にはすでに通販事業を展開しており、11年には自社開発した電子書籍サービス「紀伊國屋書店Kinoppy」もスタートしている。高井会長は「やることは早い」と述べ、「今でもアマゾンに一矢報いるためにどうしようか考えている」と話した。
今村氏は書店3店舗の経営に奮闘し、11月には新店の開業も予定しているという。無書店自治体が増えるなか、未来の子どもたちの選択肢として「紙の本」を残していきたいと意気込みを語った。
出典:新文化オンライン2026年8月6日号 2面
(https://www.digitalshinbunka.jp/PB3854PCS_000/index.php)
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